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2024年度 シラバス詳細 Detail

異文化体験セミナー
ナンバリング
HN14128
教養分野
看護学科
選択
単位
1
時間
30
川元 克秀
前期
演習
土曜日 1・2・3・4・5限
配当年次
4
「異文化」を手がかりとした他者理解の実践を行う。人間を様々な価値観や習慣、生活様式を持つ集団の中に生まれ、育ち、死んでいくものとしての理解をしていくセミナーである。価値観が多様化・個別化していると言われる現代において、他者を自分とのつながりにおいて考えることを学ぶ。
①人についての幅広い知識と理解を持ち、生命を尊ぶことができる
②人を全人的に捉え、優しく寄り添うことができる
③多様な社会を理解し、看護専門職者として保健医療福祉活動に貢献することができる
④地域の保健医療福祉の現状を知り、看護専門職者の視点で課題を見出すことで支援の必要性を理解し、取り組むことができる
⑤看護専門職者として社会に貢献できる協調性とコミュニケーション能力がある
⑥看護専門職者として社会に貢献するために生涯にわたり学修し自己研鑽することができる
以下、3つの能力の獲得を、本科目の学修目標とします。
1) 自己の看護実践が、西洋的価値至上主義(例えば科学万能主義・人類優先主義)に立脚した医療活動となりやすい点を理解した上で、その前提とは異なる価値に立つ患者への看護を、創造的に発想・構想できるようになること。
2) 「インターカルチャリズム(Interculturalism;間文化主義)」が、社会統合理念として、人種・国籍・信仰・文化を超越した看護態度の形成に寄与可能な理由を、具体的な看護場面に則して、論じることができるようになること。
3) 「マルチカルチュラリズム(Multiculturalism;多文化主義)」が、究極的には「ナショナリズム」と親和性が高い理由を、自己の看護実践に於ける患者への対応傾向と対比して、説明できるようになること。
本科目は名称に「セミナー」と入ことから推察可能な通り、基本的に「演習」形式の学習方法、即ち、学生が主体的に学びに参加する形態により、学習を進めます。具体的な学習では、イノベイティブに「探求する力」と、多様な立場の人と「協働する力」の、受講生の態度深化を重視し、以下の階層過程を繰り返す学習方法を用います。
1)事前ペアワーク:提示する論点から二人一組で、相手の言葉を鏡として自己の倫理観・道徳観の源泉を見つめます。
2)板書による学術知識の解説:その回の学習に関連した倫理学の学術知識を、キーワードを中心に解説します。
3)視聴覚メディア(DVD)による題材の提供:題材に含まれた現実を、心痛から逃げず丁寧にじっくりと心で味わいます。
4)リフレクションペアワーク:題材について学術的観点から二人一組で、自己の常識としている価値を発見します。
5)授業後のリフレクション(振り返り)言語化作業(小レポート作成):当回の学習内容について、提示された論点から各自振り返り、気付きの定着を図ります。
授業内容に関する学生の方々への総合的なフィードバックは、主に定期テスト時の冒頭にて疑問点への解説として行います。
PBL
(問題解決型学習)
反転授業
ディスカッション
ディベート
グループワーク
プレゼンテーション
実習
フィールドワーク
その他
本科目は毎回、ディープ・アクティブラーニングの一手法としての「ペアワーク」と「リフレクション」を組み合わせ、前述の階層学習を繰り返す「主体的学び」に取り組みます。
期末レポート(40%)、毎授業回に課す題材振り返りレポート(60%)
発展レベル
1.求める能力 (90点以上S)
:「インターカルチャリズム(interculturalism;間文化主義)」が、社会統合理念として人種・国籍・信仰・文化を超越した看護態度の形成に寄与可能な理由を、説明できる力。併せてその理念の重要性を、具体的な看護場面に則して、論じることができる力。

2.具体的な論述で活用を求める学術概念・実践観点
:エスノセントリズム(ethnocentrism;自民族・自集団中心主義)、排外主義(chauvinism;ショービニスム)、インターカルチャリズム(interculturalism;間文化主義)
標準レベル






1.求める能力 (80点以上A、70点以上B)
:西洋的価値とは異なる価値に立脚する患者への看護を、創造的に発想し、具体的に実践構想できる力。

2.能力の発揮にあたり具体的に活用を求める実践視点・構想観点
:伝統社会、親密意識、所属集団への帰属と依存の意識、内集団感情、外集団への異質標識の強調、外集団識別、内集団への肯定的・服従的態度、外集団への否定的・敵対的態度、補完医療、代替医療、価値多元主義、アイザイア・バーリン、QOL と SOL(sanctity of life ; 生命の神聖さと尊厳)
基礎レベル
1.求める能力 (60点以上C)
:自己の看護実践が、西洋的価値至上主義(例えば科学万能主義・人類優先思想)に立脚した医療活動となりやすい点を、具体例を用いて説明できる力。

2.具体的な説明で活用を求める学術概念
:西洋的価値至上主義、科学万能主義、人類優先思想、西洋医術、東洋医術、マルチカルチュラリズム(Multiculturalism;多文化主義)。
期末レポートを課します。筆記試験は実施しません。
課題に対するフィードバックは、振り返り小レポートに於いて多くの学生の方が共通して着目した観点について、各授業回の冒頭及び、定期試験の冒頭の時間を使い、系統的な疑問点への解説として行います。
テキストは使用しません。(必携図書・購入要請書籍はありません。)
参考図書として以下の書籍を、各回の学習内容に合せ随時、紹介予定です。
参考書 : 高城玲(著) 『大学生のための異文化・国際理解;差異と多様性への誘い』 丸善出版 2017 ISBN-10:462130125X
参考書 : 竹内章郎(著)『いのちと平等をめぐる13章;優生思想の克服のために』生活思想社,2020年,ISBN-10:491611230X
参考書 : 香川知晶(著)『命は誰のものか;増補改訂版(ディスカヴァー携書)』ディスカヴァー・トゥエンティワン,2021年,ISBN-10:4799327291
参考書 : ジョセフ・ショールズ(著) 『深層文化;異文化理解の真の課題とは何か』 大修館書店 2013 ISBN-10:4469245771
参考書 : 明治学院大学教養教育センター・社会学部(編) 『多文化共生を学び合う;配慮と偏見のはざまで』 かんよう出版 2018 ISBN-10:4906902944
「生命倫理」
なし
授業終了後に10分間、質問・相談の受付時間を設けます。また、E-Mailでの質問も受付ます。(rivergen@tbe.t-com.ne.jp)
集中開講形式での演習(学習)となります。開講の日時に注意してください。クラス指定はありません。
2024年度の開講は、『4月と5月の土曜日に3日間、1限~5限の連続学習』を予定しています。
予習
次回の学習内容に関連したキーワードを、毎授業回の最後に提示するので、図書館やネット等でそれらを調べ、自己の立脚する文化的態度の基盤・価値の傾向を確かめてくること(5時間)
復習
その授業回で提示した題材を提供した論点から振り返り、自己の文化的態度の傾向を言語化する作業に取り組むこと。尚、この結果は、毎回「題材振り返り小レポート」として、次回授業回の冒頭に回収する(10時間)

授業計画

授業内容
担当教員
1
「異文化理解・多文化共生とは?」:本科目の目的と学習方法を説明し、異文化理解・多文化共生の学術的知識体系の構成を概説した上で、次回の学習に向けた課題の提示を行う。
川元
2
「西洋中心主義と文化帝国主義(Cultural imperialism)」(その1):ナイチンゲール精神の如何なる部分が現代的に成立不能となりつつあるのか?
川元
3
「西洋中心主義と文化帝国主義(Cultural imperialism)」(その2):紛争で傷ついた子どもが、先進国の論理で選別される現実は、如何なる源泉によりもたらされるのか?
川元
4
「西洋中心主義と文化帝国主義(Cultural imperialism)」(その3): 一般に「医学」と言えば「西洋」医学を指し、それ以外の場合には、例えば「東洋医学」とわざわざ「医学」の前に「東洋」を付す現実は、看護に何をもたらしているのか?
川元
5
「信仰・宗教と看護活動」(その1): イスラーム教徒への看護は何か特別な点があるのか?
川元
6
「信仰・宗教と看護活動」(その2): ムスリムであることを理由に、女性が女性専門の医療機関での治療を望むのは、西洋医学のルールに従わない「ワガママ」なのか?
川元
7
「信仰・宗教と看護活動」(その3): 人工妊娠中絶を拒否するカトリック教徒が、母体と胎児の幸せを省みない、異端な存在であると見做されにくいのは何故なのか?
川元
8
「信仰・宗教と看護活動」(その4): 科学技術の発展と連動して深化しない人類の道徳観を信仰が補うことは、宗教への隷従というべき盲目的態度なのか?
川元
9
「人種・民族・国籍と看護活動」(その1): 医療ツーリズムで日本に訪れる途上国の富裕層は、先進国の医療活動に何を期待し来日するのか?
川元
10
「人種・民族・国籍と看護活動」(その2): 「グローバリゼーション」と標語のように唱えられ英語を話せればあたかも問題解決しそうな幻想を、「看護」の立場からどのように捉えるか?
川元
11
「生命観・金銭観と看護活動」(その1): ハリウッドセレブは何故、代理出産を依頼する側で居続けるのに、代理母をしている女性たちから憧れられやすいのか?
川元
12
「生命観・金銭観と看護活動」(その2): デザイナーベイビー用の卵子を一卵400万円で提供する、容姿が美しい日本人女性は、どのような生命観で「いのち」を見つめているのか?;「エンハンスメント」と「所有」
川元
13
「貧困と看護活動」(その1): お金が無いからと病院で治療を受けられない貧困家庭の子どもたちに、先進国の我々は何も責任を持たないのか?
川元
14
「貧困と看護活動」(その2): 日本で生活していると、我々は何故、「ビジネス活動は、道徳性から開放され得る、特権的的営為である」と、見做しやすいのか?; 医療も「慈善でないなら仕方がない」のか?
川元
15
学習のまとめ:「異文化理解・多文化共生の観点から再度、自身の看護実践を点検する」;看護師が特定の権力・権威として存在し得る責任を、異なる文化文脈内で生きる人の「いのちを守る」観点から考えると…
川元



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